Java ServletのHttpServlet#doTraceメソッド完全ガイド!初心者でもわかるTRACEリクエストの使い方と注意点
生徒
「Servletで通信内容をそのまま返すリクエストってありますか?」
先生
「はい、それにはTRACEリクエストを使います。JavaではHttpServletのdoTrace()メソッドで処理できますよ。」
生徒
「TRACEってあまり聞かないですが、どう使うんですか?」
先生
「それでは、doTrace()の基本的な仕組みと使い方、そして注意点について解説していきましょう。」
1. doTraceメソッドとは
doTrace()メソッドは、JavaのHttpServletクラスに用意されているHTTPメソッド処理用のメソッドのひとつで、HTTPのTRACEリクエストを処理します。
TRACEリクエストは、クライアントとサーバー間で送受信される内容を確認するためのもので、リクエストの内容をそのままレスポンスとして返します。
主にデバッグ用途として使われることが多く、一般的なWebアプリケーションではあまり使用されません。
2. TRACEリクエストの用途
TRACEリクエストは以下のような場面で使われます。
- HTTPリクエストが中継サーバーやプロキシでどのように変化するか確認したいとき
- リクエストヘッダーやボディの内容をそのままサーバー側で見る必要があるとき
ただし、セキュリティの観点から、多くのWebサーバーではTRACEメソッドを無効化しているケースも多いです。
3. doTraceメソッドの基本的な実装例
Java ServletでdoTrace()をオーバーライドする場合、通常はデフォルト実装のままで問題ありませんが、必要に応じて独自処理を追加することも可能です。
import javax.servlet.http.HttpServlet;
import javax.servlet.http.HttpServletRequest;
import javax.servlet.http.HttpServletResponse;
import java.io.IOException;
import java.io.PrintWriter;
import java.util.Enumeration;
public class TraceServlet extends HttpServlet {
@Override
protected void doTrace(HttpServletRequest request, HttpServletResponse response)
throws IOException {
response.setContentType("message/http");
PrintWriter out = response.getWriter();
out.println(request.getMethod() + " " + request.getRequestURI() + " " + request.getProtocol());
Enumeration<String> headerNames = request.getHeaderNames();
while (headerNames.hasMoreElements()) {
String name = headerNames.nextElement();
String value = request.getHeader(name);
out.println(name + ": " + value);
}
out.flush();
}
}
このコードでは、リクエストのメソッド、URI、プロトコル、およびすべてのヘッダーをそのままレスポンスとして返しています。
4. TRACEメソッドのセキュリティ上のリスク
TRACEメソッドは便利な反面、セキュリティリスクもあるため注意が必要です。特に以下の点に気をつけましょう。
- XST(Cross Site Tracing)攻撃の可能性
- クッキーや認証情報がそのままレスポンスされる危険
- 社内ネットワークでの内部調査用以外では基本的に無効化推奨
そのため、多くのプロダクション環境ではdoTrace()のオーバーライド自体を避けるか、HTTPサーバーでTRACEを無効にする設定が一般的です。
5. curlを使ったTRACEリクエストの送信例
TRACEリクエストはcurlコマンドでも簡単にテストできます。
curl -X TRACE http://localhost:8080/myapp/trace
このコマンドを使うと、リクエストヘッダーや情報がレスポンスとして返され、ネットワーク経路やヘッダーの中身を確認できます。
6. doTraceメソッドを使用する場面
doTrace()は、以下のような特殊な用途で使用されます。
- HTTPヘッダーの内容を詳細に確認したいとき
- 通信経路上でのプロキシやフィルターの挙動を検証したいとき
- 開発環境でのデバッグ
本番環境での利用は避け、必要に応じて開発環境でのみ有効化する設計が推奨されます。
7. サーバー側でTRACEメソッドを無効化する方法
セキュリティ強化のため、TRACEメソッドはサーバー設定で無効化することが可能です。
例えばApache Tomcatでは、web.xmlにHttpServletのdoTrace()を無効化する設定を加えることができます。
<security-constraint>
<web-resource-collection>
<web-resource-name>Disable TRACE</web-resource-name>
<url-pattern>/*</url-pattern>
<http-method>TRACE</http-method>
</web-resource-collection>
<auth-constraint/>
</security-constraint>
こうした設定を行うことで、セキュリティ上の懸念を軽減できます。